単純に言うと、Carl Coxは本物だ。20年近くイビザ島のトップDJとして活躍してきた彼は、未だにテクノ界の最前線を進み続けるレジェンドだ。決められて時期は、ハードにDJや音楽活動をし、年の半分は、オーストラリアの豪邸で優雅な時間を過ごしている。

 

仕事のオン・オフが器用にできる彼だからこそ、忙しい中DJ MAG Ibizaでも捕まえるのがとても大変だった。彼のIbiza Hillsの家へ朝の10時に訪問し、様々な真実を引き出すことができた。イビザのクラブを盛大に盛り上げてきた彼だからこそ、Spaceが営業中止するのにかなりがっかりしていたのは間違いないだろう。もちろん、最後クロージングパーティーで回せるという興奮と楽しみは伺えたが、やはりその中には悲しみもあったであろう。

 

Carl Coxは、世界で最も名の知れているDJでありながらその風格はなく、笑顔とフレンドリーさで我々を迎えてくれた。

 

最近、時代も変わりDJは、音楽作曲からパフォーマンスへと変化していますが、これについてどう思われますか?

個人的に、一人アーティストが強いキャラクターを持っているのであれば、それを変えることはできない。例えば、新たなEats EverythingやSeth Troxlerは、現れない。彼らは、才能を持って生まれてきた者であり、それに指図するつもりはない。もちろん、いいパフォーマーになることは素晴らしいことである。しかし、これは教えられるものではない。

 

Carl Coxさんが、テラスの上でギグを行っていた時代とは変わり、 常に進化し続けるていることで新たに、大きなステージができ、照明、 花火といった演出や様々なものがDJパフォーマンスをサポートしていますが、前と今を比べどっちの方が自分に合っていますか?

どっちかを選べと言われたら、とても難しい。でも、確実に言えるのは、前と今では大きく変わっており、進化している。先週の火曜日にSpaceで回した時も初めてテラスの上で回した時も同じくらいきつかったし、楽しかった。最終的には、自分に音楽になってくるんだよ。もちろん、お客さんもDJも楽しめる演出をするのは重要であり、モチベーションを上げてくれる。でも、演出とかが変わっても必ず変わらないのは、自分の音楽であり、それは譲れないよね。

 

 

イビザ島にいない時は、オーストラリアによくいられますが、なぜオーストラリアなのですか?

僕は、イギリスのDJの中でも最初の方にオーストラリアに行った一人で、89年に初めて行ったと思う。オーストラリアで僕のトラック「I Want You Forever」が、ラジオでヒットしたから行ってみようと思っただけだよ。単純だよね。最初は、特に何も期待はしていなかった。ただただ、未知の場所で自分のトラックがヒットしているから行けるだけで嬉しかった。 確か、4回も乗り継いで行ったよ…笑 今でも、毎年オーストラリアには行ってるよ。イビザの夏が終わったら向こうは夏だからね。常に、夏を味わっているんだ。 個人的に、常にシドニーよりメルボルンに興味があった。なんか、シドニーは一時的って感じがして、落ち着けない。だから、今は年の半分をメルボルンの郊外で暮らしているよ。多分この世の中で一番郊外な場所だと思うよ。お店やレストランも全て夜の9時で閉店するからね…笑 ここに来ると、世界的DJとしてではなく、一般人として時間を過ごせるからいいんだよね。世の中には、僕とは正反対で常にセレブとパーティーをしてたりするDJもいるが、僕は、自分の時間が癒しなんだ。オーストラリアでは、素の自分でいれて、周りには友達がいて、このような生活はここメルボルン以外ではできない。イギリスでもね。だから、オーストラリアにたどり着いたんだ。

 

スーパースターDJとしては、どのような対応をとっていますか?Spaceには、常にボディーガードがいますが、疲れないんですか?

疲れないよ。イビザ島だからこれが普通であって、普段はこんなんじゃないんだ。もちろん、みんなとも遊びたいから遊びけど、終わったら素直に一人で帰るよ。 例えば、空港に着いた時、車に出てパーキングを歩いているだけで5人とかにセルフィーを撮られるのは、当たり前。ボディーガードもセルフィーに入れて撮ってるよ…笑 彼らは、ファンだからもちろん逃げたりすることはしない。前までは、こんなことありえなかったからね。断れないさ。 これが、現状であり、常にこういうことではない。だからもし疲れたらオーストラリアに逃げるんだ…笑 そこだったら、バイクに乗って普通に道を歩けるからね。比較的正反対の人生で面白いでしょ。

 

 

‘All Roads Lead To The Dancefloor’が最後のアルバムと発表していましたが、なぜ最後なのですか?

これは、僕の4つ目のアルバムなんだ。もしバンドで例えると、一つ目のアルバムは、「うわぁ〜このバンドすご〜い! 最高!」とか評価されて、二つ目では、「うわ、、、やっぱこのバンド最低じゃん、、」ってなるよね。で、三つ目では、「曲調とか色々変えたのね。まぁ〜バラードもいいんじゃん」って評価されて多くの人たちはこれで終わる。だけど、僕は4つ目のアルバムを発表した。このアルバムは全部オーストラリアで作りたかった。オーストラリアで、最高のボーカリストや様々な方々を呼んでやった結果、ライブショーとかもできた。大好評だったよ。でも、これにお金はかけすぎたよね…笑 このアルバムは、みんなに曲のコンセプトを聞いてもらいたかったけど、結局ヒット曲は出なかった。このアルバム全てに2年を費やし、時間をかけすぎたのは事実だ。本当は、まだアルバムを出していきたいけど、Carl Coxとしてではなく出したいよね。ハードルが高すぎるよ。

 

期待と言っていましたが、Carl Coxさんはレジェンドという評価をよくされると思いますが、俺に対してプレッシャーを感じているということですか?

特に、そういうことではない。もちろん僕は、自分でレジェンドなんておもっていないからね。君が友達のようにこれからパイでの食べに行こうよと言ったら喜んで行くよ! この対応がレジェンドなのかは分からないが、ただ僕がパイを欲しているというのは事実だ…笑。もちろん、他人からそのように評価されるのはとても嬉しいよ。冷静に考えて、そういう風に評価してもらえる人って数えられるくらいでしょ? でも、僕は、僕であってCarl Coxだから、自分をそう思ったことは一度もないよ。

 

他のDJは、風が吹くように来て去っていくが、なんでCarl Coxさんは長くイビザ島でやれるのですか?

多分、島に住んで、島をリスペクトしているから多くのことを知ることができているっていうのは、事実としてあるよね。イビザでは、自分がみんなをサポートすればそれなりのレスポンスが戻ってくるんだ。それを理解してるから20年近くもこの島でやらせてもらえる一つの理由だと思う。84年からこの島で回し始めたからこのダンスフロアで踊っている人たちが生まれる前からいるかもね…笑この場所に出稼ぎに来るDJもいれば、名を売りに来る人もいる。でも、これはうまくいかない。この島から一晩で注目を得られるという考えは通じない。心からこの場所を愛しているからこそ継続してこの場所で仕事ができるんだと思う。

 

Spaceの歴史を振り返ると常にバラ色だったとは言えないと思うが、一番難しかった、厳しかったチャレンジは何かありますか?

最初に始めた時は、音楽的に我々みたいな者、イビザ島自体にいなかった… 競争する相手がいなかった。今は、振り返ればそこらじゅうに敵がいるよね…笑。つまり、この競争社会の中僕はいつも、自分のベストを尽くすことと毎週新しいことやるっていうのを意識してた。毎年前年とは違うバイブやエネルギーが流れていて常にユニークな状況を作り上げてきたつもりだ。古い者は捨て、新しいものを求め続けてきた。例えば、テラスでは、D&BやHip-Hopを流し、お客さんを少し怖がらせてたよね…笑。

 

 

重要な質問として、Carl Coxさんは来年何か特別なことはやられますか?

まだ引退はしないよ。もちろん、その時は確実に近づいてきてるけど、まだだね。Spaceのオーナー・Pepe Roselloは、80歳でこのような未だにこのシーンから引退しない。彼が、引退するときに僕は引退するかもね。なぜなら、二人で青春を過ごし様々なことを築いてきたからね。

 

Pepeさんは本当にクラブが好きなんですね!?

オーナーとして多くの方々とお会いしていると思うが、未だに僕のことを息子としてみてくれているんだよね。もちろん、僕にも実の父親はいるが、Pepeはイビザ島の文化を築き上げるときから 未だにサポートをしてくれていて、とても感謝している。彼には、何もあげることはできないが、僕のハートとリスペクトは完全に盗まれたよ…笑。彼とは、オーナーとDJの関係であり、お金をもらって彼のステージを借りお客さんを盛り上げているが、本当はそれ以上の関係なんだ。クラブを満員にして彼の喜ぶ顔を見る今夜も大成功だなって思うよ。

 

このような素晴らしい時が終わってしまうけど、どうですか? 終わって欲しいですか?

Pepeが振り返って後5年やろう! って言ったら僕はもちろん賛成して同じ船に乗り込むよ! でも、終わりは終わりだからそこは、Pepeがどうのこうのとかではなく、何杯か呑んで悲しみを流すよ。イビザ島は今変化を求めており、Spaceがなくなるだけでも大きな影響を与えるだろう。でも、僕は戻ってくるよ。そして、戻ってきた時には特別に振る舞うって決めているから楽しみにしといて!

 

イビザ島が変わるとおっしゃっていましたが、イビザ島はVIPに集中しすぎってことですか?

そうですね、お金は集まります。お金を使う人、お金を求めてくる人。それに限ります。僕が、初めて来た時にはお金もなかったし、今のようなVIP文化も存在しなかった。でも、楽しむことは十分にできた。それに比べ今は、テーブルを取るだけで、「お前誰だ!」っていう反応でバーからも厳しい対応をされるのはよく聞くね。前までは、クラブに電話がかかってきても「今日はクラブ営業してるの? 今日のDJラインアップはどう?誰が回すの?」だったのが、今は「テーブルを取りたい」になっているのが現状だ。「待って、クラブ行くのに一晩中座ってるの!?」っていうVIP文化が根付いてしまった。僕は、正直もったいないと思ってる…。

 

 

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